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デジタル化の準備、本当にできていますか?

奈川産業振興センターの経営総合相談課には日々さまざまな相談が寄せられています。

今回ご紹介するのは、「社内のデジタル化」についてのご相談です。

ご相談の多くが、「不便・非効率な業務をデジタル化して効率化したい」という内容です。

では、社内のデジタル化を進めたい!と思ったときにどうすればよいか、事例を用いて説明します。

中小企業の未来をひらくデジタル化の重要性

本題に入る前に、デジタル化の重要性についてお話しします。

なぜ、中小企業がデジタル化を進める必要があるのか。
それは、競争力強化や持続可能な成長に直結してくるからです。

デジタル化に取り組むべき理由はいくつかありますが、一つとして「人手不足の解消」が挙げられます。

皆さんご存じの通り、日本の生産年齢人口は1990年代をピークに下がり続けています。
このままいくと将来的に企業の人員確保が厳しくなります。

(参照:総務省-令和4年版 情報通信白書-生産年齢人口の減少)

人手不足の解消には非効率な業務をデジタル化し、業務工数を削減する必要があるのです。

デジタル化により業務を効率化することは人手不足の解消だけでなく、
業務時間短縮による職場環境の改善・人材コストの削減・属人化の解消にも効果的です。

また、業務効率化による財務・人員の余裕が企業にとって新たな市場展開の可能性も広げます。

すなわち、企業が未来に向けて成長し続けるためにもデジタル化が重要になってくるのです。

デジタル化を進めるときのポイント

では、早速デジタル化を進めようと思ったとき、皆さんは何からとりかかりますか。
今回はデジタル化を進めるにあたって重要な3つのポイントを事例に沿って紹介します。

A社からのご相談

  • 業種:電子機器製造業
    資本金:4,000万円 従業員数:80人 売上高:7億円

「業務拡大に伴い、扱う在庫が増えてきたため在庫状況を可視化したい。」
というご相談がありました。

現地でお話を伺うことになり、A社からは責任者、システム担当者、在庫管理の担当者が出席されました。

システム担当者
「業務拡大により、扱う部品・仕掛品・製品が増えた。
 人力で管理するには限界があるためデジタル化をしたい。」

一方、在庫管理の担当者
「各担当者で在庫状況は把握している。
 それより、在庫確認をしている回数が異常である。
 業務の仕方を見直すべきではないか。」

そこで専門家からの一言、
「今回デジタル化をする目的を明確にしましょう。」

ポイント1:デジタル化の成功の鍵<目的を明確に>

デジタル化の成功には目的の明確化が不可欠です。
明確な目的がなければ、向かうべき方向を見失い失敗に陥るケースや無駄な投資が生じるケースが多くあります。
デジタル化の成功を目指すのであれば、まずは企業としてデジタル化の目的を明確にしましょう。

会社としてのデジタル化の目的を明確化したところで、このような話になりました。

システム担当者
「今回のデジタル化は“在庫状況の可視化と属人化しない管理により過不足なく在庫を維持すること”を目的とする。
 では、どのシステムを選ぼうか。」

在庫管理の担当者
「こういった機能が欲しい。
 でもここが課題だから、課題を解決するシステムがいい。」

システム担当者
「Aシステムはどうですか。」

在庫管理の担当者
「ほしい機能が揃っていない。」

そこで専門家からの一言、
「業務の整理と課題の洗い出しは行っていますか。」

ポイント2:デジタル化を進める前に<現状の把握を>

デジタル化を進める際、システムありきで話を始めてしまいがちですが、
その前に現状の業務がどのように行われているか、課題はどこにあるかを洗い出すことが重要です。

  • 現在行っている業務に無駄な業務はないのか
  • どの業務がデジタル化できるところなのか
  • デジタル化をするにあたって変更すべき業務はあるか

これらを洗い出していくと具体的にどの業務をデジタル化すべきであるのかが明確になります。
システム選定の前に必ず現状の把握と課題の洗い出しを行いましょう。

現状の業務が可視化され、解決すべき課題も明確になってきました。

次に話題として出てきたのがリソースの話です。

システム担当者
「デジタル化の目的が明確になり、解決すべき課題と変えていきたい業務が具体化された。
 早速システム選定と導入に移りたいが、在庫管理担当の協力も必要である。」

在庫管理の担当者
「協力したいが、今は忙しくて時間を割くことができない。」

システム担当者
「どのくらいの予算感で導入していくかも決めたい。」

責任者の方
「お金に余裕があるわけではないから極力抑えたい。」

そこで、専門家からの一言、
「デジタル化には一定程度のリソースが必要です。よく考えていきましょう。」

ポイント3:デジタル化への投資<リソースの確保を>

デジタル化の規模にもよりますが、一定程度のリソースが必要となってきます。
リソース不足は計画の遅れや業務品質の低下を招く可能性があります。
ここで今一度デジタル化の目的を思い出してもらい、デジタル化への投資が企業にとって未来の投資であることを理解してもらいましょう。

企業にとってのリソースといえば、大きく2つで「人員」と「予算」になってきます。
どうしてもリソースが足りない場合は導入時期をずらすことも一つの手でしょう。

導入に向けてリソースが確保できる時期を決めていきました。
ここまででやっとデジタル化への準備が整ったといえるでしょう。
※そのほか、企業の状況によって取り組むべき内容は異なってきます。

ご相談ください

今回ご紹介した内容は、デジタル化におけるポイントのほんの一部となります。
デジタル化の重要性とポイントを抑えた準備の必要性をご理解いただけたら幸いです。

もしかしたら、デジタル化に対して少しハードルが高く思えてしまった方もいらっしゃるかもしれません。

その場合、自社だけで解決しようとせず、専門家の力を借りることも一つの手段です。

デジタル化について気になる方、ご支援を必要とされる方がいらっしゃいましたら、
ぜひ神奈川産業振興センターにご相談ください。

DX支援アドバイザーが日々運用できるところまで伴走支援を行います。

提供:公益財団法人神奈川産業振興センター
経営支援部 経営総合相談課 金子 千鶴

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